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執筆者の写真永井宏達

変形性股関節症に対する自宅でのケア

今回は、論文のご紹介です。


大阪にある股関節専門クリニック(増原クリニック)の先生方と行った研究が、論文になりました。



今回は、変形性股関節症の外来患者さんを対象に、

フォームローラーという道具を使用した理学療法介入の効果を検証しました。

(筆頭著者は、増原クリニックの生友先生です。

 これまで、股関節疾患の理学療法の発展に寄与する様々な研究をされています。)



研究デザインは、非無作為化の介入試験です。

交絡因子による影響を可能な限り除外するために、従来型の理学療法のみ受けていた集団と、フォームローラーによるセルフマッサージを加えた集団(それぞれ介入時期が異なります)を対象に、プロペンシティスコアマッチングという手法を用いて、対象者を後方視的に選択しました。


理想的には無作為化比較対照試験が好ましいですが、

臨床場面での実施は容易ではありません。

今回は、実現可能性を考慮したデザインとなりました。



従来型の理学療法(患者教育、徒手療法、ストレッチング、筋力トレーニング、ADL練習、自宅での運動指導)に加えて、

フォームローラー群では、ローラーを用いたセルフマッサージを毎日10分程度実施していただきました。

介入期間は、それぞれ3ヶ月間でした。



フォームローラーによるストレッチングの様子はこんな感じです。

●今回用いたフォームローラー




●大殿筋等に対するアプローチ



●中殿筋等に対するアプローチ




結果、フォームローラーを併用した介入の方が、

股関節の痛み、総合的な機能スコア等が有意に改善しました。

痛みに関しては、フォームローラー群の90%以上の方に、有意義な改善を認めました。

また、今回の介入は、股関節の重症度に関わらず、改善効果が期待できることも明らかになりました。



ポイントは、フォームローラーを用いることで、筋を中心とした軟部組織や結合組織に対して、毎日アプローチできるという点だと思います。

外来に毎日通い、理学療法士による介入を受けることができれば、疼痛をコントロールが可能かもしれませんが、それは決して現実的ではありません。

ローラーを用いて1日に1回直接的なアプローチが行えることで、筋線維や結合組織等の循環の改善、筋緊張の抑制等につながることが、疼痛の抑制効果を高めたと考えられます。



関節を起因とする種々の慢性痛に対して、自宅での日々のケアが重要であることを示しています。

股関節以外の疾患でも、適切に用いれば、効果を発揮できるかもしれません。




<参考文献>

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